東京高等裁判所 昭和37年(ツ)51号 判決
上告人は、被上告人島田源蔵が供託したのは東京法務局北出張所でなく新宿出張所であるから効力がないと主張するので判断する。被上告人島田源蔵の上告人に対し負担する本件賃料(金銭債務)の弁済の場所が東京都豊島区内にあつて、その履行地が豊島区であることは上告人の認めているところであり、民法第四九五条第一項は、供託は債務履行地の供託所になすことを要する旨を規定し、また、供託法第一条には、法令の規定により供託する金銭及び有価証券は法務局もしくは地方法務局又はその支局もしくは法務大臣の指定する出張所が供託所としてこれを保管する旨を規定しているので、本件供託当時、債務の履行地である豊島区内に供託事務を取り扱うものとして法務大臣の指定をうけた東京法務局の出張所があるならば、被上告人島田源蔵は右出張所に本件賃料を供託すべきものであるけれども、豊島区内にこのような出張所の存在しないことは当裁判所に顕著なところである。このように債務の履行地に供託所がないときは、履行地以外の相当な供託所に供託することができるものと解するを相当とするところ、東京法務局新宿出張所は本件債務の履行地である豊島区に隣接する新宿区内に存在し、交通の便の点から考えてみても、本件における供託所として相当であると認めることができるから、同出張所に対してなした被上告人島田源蔵の本件賃料の弁済供託は適法有効なものといわなければならない。
(村松 伊藤 杉山)